君と初めて会った日のことを
私はよく覚えているよ。
よく晴れた秋の日
地下鉄の駅を上がったところ
君は大きめのショートケーキ1コがやっと収まるくらいの
ちっちゃな箱に入ってやってきた。
そこから私の家までは
歩いて2分もないのだけど
そのたった2分が我慢できなくて
私は箱を受けとるやいなや
ふたを開けてしまった。
中には
まだ毛もボソボソで
華奢な体に不釣り合いなほど大きな目をした
箱よりもさらにちっちゃなちっちゃな君がいた。
君は生まれてすぐに捨てられちゃった猫、
と聞いていたけど
君の瞳は明るくて好奇心でいっぱいで
箱の淵に白い両手をちょこんとかけて
まっすぐに私を見上げてきたね。
本当は
動物の最期をみとるなんてもう二度といやだったから
君を迎えることも
私はまだ少し迷っていたんだよ。
だけど
私を見つめる君の無垢な瞳に出会った瞬間
そんな迷いはどこかに消えてなくなってしまった。
私は君を家に連れて帰り
迷っていたわりにはしっかり考えていた名前、《はっとりくん》と呼んでみた。
君はキョトンとした顔をしたあと
私の膝に興味深そうに寄ってきて
そのまま
膝によじ登って
白いお腹をだして
きっちり2時間
爆睡してしまった。
君のお腹が気持ちよさそうにプクプクと動くのを見守りながら
その日以来
私の中の単位は
1、から2、になった。

ハチ、ずっとずっと健やかに。
お誕生日
おめでとう。