染織家・中路道人氏原画の飾り扇。
1年12ヶ月の花が、12本の扇に描かれている。
今月は雪柳。ひとつひとつは小さくて可憐な花だが、団体戦(?)になるといっきに派手で力強い佇まいに変わる。
ところで記憶に残っている「人生最初の絵」は
6歳違いの兄が描いだネコの絵だ。
当時住んでいた家の台所にあった水屋のガラス戸に
原稿用紙か何かに赤鉛筆(もしくは細字の赤マジック?)で描かれた兄の絵が貼ってあった。
二頭身くらいのネコがどっしり座ってこちらを見ている。
まだ私が幼稚園にも行かない頃だっただろうか。
長いことそこに貼ってあったのか
少しセピア色化した原稿用紙の風情や
人懐っこそうにこちらを見ているネコの表情まで鮮明に覚えている。
ネコの絵を描いた少年は
特に絵を習うということもなく
そのまま九州の片田舎で育ち
大学受験も間近になった高校時代のある日
突然「俺、東京芸大の美術に行く!」と言い出し
まわり中の大人たちをドン引きさせたあげく
本当に東京芸大に合格し、大学院まで進んだのち
今はその道の仕事をしている。
そう言えばあの絵はその後どうなったのだろう。
きっと引っ越しとかのタイミングで剥がされて処分されたのだろうが
〇十年という歳月が流れてもいまだに私の中に残っている(そしてなぜか私も兄もネコ飼いになった)。
存在が消えても
「心の中でいつまでも生き続ける」という感覚が
生き続けている期間が長い分だけ
自分の中で腑に落ちてくる一枚の絵。
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