99f9122b.jpg何度読んでも胸がキュンとして
ウルウルになってしまう大・大好きな絵本『くろねこのおくりもの』。
ショップで何気なく手にとって立ち読みをしたのが最初だったが
どんどん引き込まれていって
最後は人目も憚らずポロポロ泣いてしまった。
と言っても別にたいそうなストーリーでもないのだが

ある日一人で暮らす女性のもとに
一匹の黒猫がやってくる。
黒猫は「お醤油はいりませんか!?」と聞いてくる。
ちょうどその時、女性はお醤油をきらして困っていたところだった。
黒猫は小さな鰹節パック一個でお醤油をあげる、と言う。
取り引きが成立し
黒猫はいせいよく「まいどっ!」と言うと
チラリと女性を振り返り帰っていく。
次の日も、その次の日も
黒猫は女性がちょうどその時欲しいもの(石鹸とか切手とかどれもたいしたものではないが)を持って現れ
鰹節で手を打ち
いせいよく「まいどっ!」と言って帰っていく。
いつの間にか女性の玄関には鰹節パックが常備されるようになったそんなある日
女性はふとどうしようもない孤独感に襲われる。
いたたまれないような思いで布団にくるまっていたその時
玄関のチャイムが鳴る。
ドアをあけると
そこにはいつものいせいのいい黒猫ではなく
恥ずかしそうにうつむいた黒猫が立っている。
やがて黒猫は意を決したように
「あの・・、くろねこはいりませんか・・?」と聞いてくる。
女性はすぐさま鰹節を渡し
そろそろと近寄ってきた黒猫をやさしく抱き上げる。
黒猫は女性の腕の中で
小さな声で嬉しそうに「まいど・・」とつぶやく。

という話だ。

本当にどうってことのないストーリーだが
黒猫が最初に女性を見つけた日から
女性の胸に抱きあげられるまでの彼の心の歴史を思うと
いとおしさで胸が締め付けられる。
ここからは私の想像だが
黒猫君はある日その女性を見つけ
大好きになってしまう。
だからありとあらゆる手段を使って女性の欲しいものを調達してくる。
人間にとっては些細なものだが
猫にとってはあるいは命懸けのものかもしれない。
そしてその命懸けで調達したものを「あげる」とは言わず「鰹節と交換する」と言い
最後は必ず「まいどっ!」と言い残して帰っていく。
それがまた可愛い。
もしかしてその鰹節は黒猫君の口には入らないのかもしれない。
調達に協力してもらった仲間の猫への報酬で使ったかもしれないし
(非合法で?)調達する際に、追っかけ回されて転んだ時のケガを治す薬代に消えたかもしれない。
ある日黒猫君は
その時女性が欲しているものが「何か温かいもの」「優しい温もり」だと知る。
黒猫君は最初生まれたばかりのフワフワの仔猫を
仲間のお母さん猫からもらってきて
女性に届けようとしたのかもしるない。
が、その道すがら黒猫君は突然立ち止まり
「違うっ!!」と叫ぶ。
「僕が本当に本当に届けたいものは仔猫じゃないっ!!」。
黒猫君はすぐに母猫に仔猫を返し
世界中の勇気をかき集めて女性の家に向かう。
恥ずかしくて不安で
心臓が壊れそうなほどドキドキする中
やっと黒猫君の口をついて出た言葉は
「僕、おねーさんのそばにいたい・・」ではなく
「あの・・、くろねこはいりませんか・・?」。
そして取り引きが成立したあとも
ちゃんと律儀に「まいど・・」とつぶやく。
可愛いぃぃぃぃぃぃぃじゃないかっっっっ!!
・・なんていうのは猫バカの私の限りなく好意的・盲目的見方の極致で
もしかして黒猫君は最初から自らのメシとネグラのために
綿密に計画し、女性の心を捉えるべく込み入った演出をしたのかもしれない。
だとしたらなんて小賢しい猫だろう、とも思うが
そんな知恵を持った猫なら猫でまた
可愛いったらありゃしないぃぃぃぃぃと思ってしまう。
そう言えば我が家のハチも
うちに来たばかりの頃はそりゃあイタイケでオボコイ猫だった・・。
今やこのブログを描いている横で(私は大抵携帯から投稿している)
白いお餅のようなお腹を出して
どっかのオヤジのようにガーガー寝てい(やが)る。
フテブテシクなったものだ、と思うが
そのオヤジっぷりもまた
可愛くて仕方ないのだから
おめでたいものだ。

大切なお友達のお誕生日に
今年は『くろねこのおくりもの』を送った。