「この人誰?」。

女子フィギュアスケートの全日本を見た。
私は以前から中野選手の演技が好きで
なんとなく応援しているのだが
いつだったかピアソラのタンゴで滑る鈴木明子選手のエキシビションを見た時
その演技が強く印象に残り
以来、鈴木選手もなんとなく気になるようになった。

今度の全日本はバンクーバー行きの権利をかけて
中野選手と鈴木選手の一騎討ちみたいなところが見所になっていたが
どちらも応援している私にとっては
なかなか複雑な思いもあった。

さて初日のショートプログラム、息がつまるような緊張感が漂う中
『アンダルシア』の曲にのって鈴木選手の演技が始まった。
『アンダルシア』はリバーダンスで一聞き惚れした曲、ということもあって
最初から引き込まれていったのだが
中盤のスパイラルでアップになった鈴木選手の顔(表情)を見た時
そのあまりの美しさに驚きを通りこして
キョトンとしてしまった。
本当に言葉通りに「この人誰?」と思ってしまった。
聞きようによってはまるでそれまで鈴木選手が美しくなかったみたいで失礼なのだが
けっしてそういう意味ではなく
とにかくあっけにとられるくらい美しかったのだ。

単純な速さや高さや強さ以外に
演技力や芸術性も求められる熾烈極まりないフィギュアスケートという競技会において
あらゆる意味でより完成度の高いプログラムを見た時は本当に感動するものだが
『アンダルシア』における鈴木選手は
自分を信じ、自分を許している選手が放つオーラみたいなものが画面を通しても伝わってきて
いつにも増していたく感動してしまった。

ショートを僅差の4位で折り返し
翌日のフリーは『ウエストサイドストーリー』。

そこには
ジャンプがどうとかステップがどうとか
もうそんなことはどうでもいいかな、と思えてしまうほどの(スポーツである以上どうでもよくないのだが)
昨日の美しい鈴木選手、でも
まして病気から復帰してまもない頃の、ちょっとあか抜けないけど目力があって愛らしい鈴木選手、でもない
ただただひたすらの
『マリア』そのものがいた。

結果は堂々の2位。バンクーバー行きを決めた。

かく、ありたい、と思う。

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