少女。

前を行く小学校2、3年生くらいの少女が
乗っていた自転車ごと転んだ。
すぐに火がついたように泣きだし
一緒にいたお友達数人が心配そうにのぞきこんでいる。
膝から血を流していたので私もなんとなく気にかかりながら通り過ぎようとしたその時
泣き叫んでいる少女の意外な声が聞こえてきた。
《お母さんに怒られるー、お母さんに怒られるー!!》。
転んで怪我をした痛さよりそっちか・・と
ちょっと拍子抜けしたような
ちょっとせつないような気持ちになった。
母親に《お洋服をよごしちゃいけません》とでもきつく言われてるのかな、
にしては買ったばかりのドレスでもない普通のTシャツにスカートだけど・・、
いつもお転婆が過ぎてて母親が手を焼いてる子で、
今度泥んこになって帰ってきたら承知しない、とか言われてるのかな、
転んだ痛さより母親に叱られる恐怖が先にたって泣く少女の気持ちとはどういうものだろう・・、
わずかの間にいろんなことを想像してしまった。
そしてふと自分の子供の頃を思い出した。
小学校に上がる前のある日の午後
気がつくと子供用の蚊帳の中にいた。
どうやらお昼寝をしていたらしい。
起きて家の中をあちこちさがしたが誰もいない。
ふと窓から外を見ると
空き地のむこうの道で
兄が買ってもらったばかりの自転車に乗る練習をしていて
それをそばで母が見守っていた。
《あそこに行こう》と私は思い
同時に《戸締まりをしなきゃ》と思った。
が、私がごくごく小さいころはまだ今のようなサッシの窓ではなく
鍵もねじ込み式のめんどうなものだった。
したがって大人の背丈程の大きな窓は子供にとっては途方もなく重く
運良く閉まっても今度は鍵をかけるのに時間がかかった。
どうしても閉まってくれない重い窓と格闘するうち
私はわんわん泣きだしてしまった。
そこに母と兄が帰ってきたのだが
《戸が閉まらない、戸が閉まらないー!》と泣き叫んでいる私を見て
二人はどう思ったのだろう。
その後のことはよく覚えていない。
うまく言えないが
あの時私は自分に腹が立っていたのだ。
窓がうまく閉められない自分に。
そしてなにより
戸締まりなんかを気にして
すぐに母と兄の元に飛び出して行けない自分に。
さらにそんな自分の気持ちを母と兄にちゃんと説明できない自分に(なんとまぁ可愛くない子供でしょうね・・)。
そんな小さな子供にそんな微妙でややこしい(?)感情があるものか、と思われるかもしれないが
確かに私はあの時自分がはがゆくて仕方なかったのだ。
もちろん今だからこそそのはがゆさの理由や内訳を言葉にして説明できるのだが
当時は重い窓に手を掛けて悪戦苦闘しながら
ただただ心の中で
《(こんなのほっといて母と兄のところに)行けばいいのに、行けばいいのに!!》と
そればかりを繰り返していただけだったのだが。
その自分へのはがゆさに
目覚めた時の心細さや
少しずつせまってくる夕暮れの心もとなさがないまぜになって
泣きだした私の口から出たのが
《戸が閉まらない、戸が閉まらないー!》だったように思う。
自転車で転んで膝を怪我したあの少女は何を思って泣いていたのか
お友達にかこまれて泣きじゃくる少女の声を聞きながら
くだらないことを考えてしまった。

コメント

  1. kinsuimi より:

    あ、ウクレレでしたか。こりゃ失礼
    ところで次回は老け比べ(!?)ということで
    楽しみにしています

  2. madam より:

    ウクレレじゃー!!(発表会)
    奥さんなす!。。。。。大笑い!!
    私は大学生に間違えられた。
    次回にゆっくりと!!

  3. kinsuimi より:

    え!本当ですか?なんかめちゃめちゃうれしい・・。なぜかしら・・。
    ところで幼い頃より老けていたのは気持ちだけではありません。なんと小学校6年生の時に近所の八百屋さんに<奥さん、今日はナスが安いよ!>と声をかけられました・・
    もうすぐフラの発表会でしたよね!?がんばってくださいね
    終わって落ちついたらまたぜひ近々お会いしたいです

  4. madam より:

    どうして?
    なんで?
    体験的感情が酷似しすぎ。。。!!
    幼い頃より気持ち老けていたの。。。。!?(笑い)
    (そう言う問題ではないか。)
    前世では同一人物だったりして。。。。。!!
    でもビックリでした。

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