庭に咲いた大輪の深紅の薔薇。
パッション、という種類だそうです。
薔薇、と言うとすぐに思い浮かぶのがバレエの《薔薇の精》。
私は曲も含めてこのプログラムが大・大好きだ。
初めて観たのはパトリック・デュポンだったと思うが
男でも女でもない薔薇の精の
濃厚で包容力に満ちた美しさと色気に
文字通り酔いしれてしまった。
鏡から想像を絶する高さで跳躍しながら薔薇の精が現れた時の
息がとまりそうなほどの心の震えは今でも忘れられない。
むせかえるような薔薇の香りにつつまれながら
ひとときの甘い夢を見せてもらっているうちに
薔薇の精は再び吸い込まれるように鏡に帰っていった。
実際の〈花酔い〉は経験したことはないが
あのひととき
私は確実に薔薇の精に魅せられ、酔いしれていた。
私に甘美で贅沢な〈花酔い〉を教えてくれたのは
舞台に咲いた薔薇の花。