『その顔が見てみたい』。

どこの局かは覚えてないが
『その顔が見てみたい』というタイトルのテレビ番組がある(確か)。
要するにタレントさんにドッキリを仕掛けて、ネタばらしをされた瞬間の顔を撮る、という番組らしい。
最初にそのタイトルを見た時は『なんとなくサディスティックなタイトルだなぁ・・』と思ったのだが。

以前もこのブログで書いたが
昔実家にメリーちゃんというスピッツがいた。
家族の愛情を一人占めするようにして育った彼女は
人間よりも人間くさい感情表現をする、まさに愛すべきキャラクターの犬になった。
ある日兄弟三人でお墓参りに出かけることになり
当然『自分も兄弟』くらいに思っているメリーが留守番をするわけもなく
蚊取り線香持参で彼女も連れていくことになった。
お参りをしている間メリーは木陰で気持ちよさそうに惰眠を貪っていて
用がすんで帰ろう、という段になっても起きる気配すらなく爆睡していた。
無理矢理起こして連れて帰ろうとしたのだが
安心しきって寝ているメリーの顔があまりにあまりに可愛くて
可愛すぎてなんだかちょっとイタズラしてみたくなった。
お墓は小高い丘みたいなところにあるのだが
わざとメリーを起こさず、人間だけそーっと先に降りて
下の駐車場のところから眠っている彼女に『メリー!!』と声をかけた。
飛び起きたメリーはあわててキョロキョロとあたりを見回し
やっと眼下の駐車場に私達の姿を見つけると
丘を飛ぶようにして走り降りてきた。
あの時私達は
目を覚まして『え!?え!?みゆきちゃん(私の本名です)どこっっ!?』とあわてて私達を探すメリーの、ちょっととっちらかった顔を見てみたかったのだと思う。
飼い主として決して誉められたものではないが
私も十分『その顔が見てみたい』という、サディスティックな願望があるらしい。
もちろん愛してやまない対象に対して、という大前提つきだが。

ところで丘から走り降りてきたメリーにはその後のオチがある。
両手を広げてメリーを抱きとめようと待っていた私の手前1メーターくらいのところで
爆走してきたメリーが突然急停止したのだ。
そしてプイッと背中を向けると
何事もなかったかのように、なんとなくそのへんを所在なげにプラプラし始めた。
おそらくその時の彼女の心の中では
『えっ!?えっ!?みんなどこっ!?』

『あっ!!あんなところにいたっ!!』

『みんな、待って、待ってぇ!!おいてけぼりなんて、ひどいっ!!』

『あ、みんな待ってくれてる!!』

『わーい!!みゆきちゃんが抱っこしてくれるって言ってるー!!』

そこでハタと気づく。
『そう言えばあたしさっき置き去りにされたんだったわ・・。』

『抱っこはされたいけど、でも、でも、あたしを置き去りにしたみゆきちゃんに(文字通り)シッポを振って抱きつくなんて・・。』

『抱っこ好きだけど、やっぱあたしにだってプライドがあるもんっ!』

『抱っこしてほしい、でも悔しいぃぃ。』
という葛藤があったのではないか。
そりゃそうだよね・・・。
スネるメリーにその後人間が平謝りに謝り
車に乗ってからやっとご機嫌を直し
いつもの超ド級甘えん坊メリーに戻ってくれた。

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